all Reset 【完全版】
一筋の光
梅雨の中休み…とでもいうのかもしれない。
今日は夏を予感させる湿った暑さがある。
亜希を連れて出掛けるのは、妙な緊張感があった。
まるで小さな子どもを連れて歩くようで、気を抜いて目を離すこともできない。
放っておけば好奇心の向くままどこか勝手に行ってしまいそうなかんじ。
亜希を挟んで三人で歩く。
父親と母親に挟まれて手を繋ぐ子どもみたいに、亜希はさっきから俺と秀の手首を掴んでいる。
いつの間にか、ただ自然と亜希がそうしていた。
傍から見れば、かなり奇妙な光景なのかもしれない。
おばさんは亜希を連れて出掛けることを心配しながら見送っていた。
口では、
「迷惑掛けなきゃいいけど……」
なんて言ってたけど、自分から離れて家を出ること自体が心配なんだと思う。
この状況から見て、親なら当たり前だと思う。
でも、亜希の何かが変わればいい。
そんな期待の気持ちも折り交ざってる気がした。
主婦っぽい人に連れられて歩いてくるミニチュアダックスフンドを見付けると、亜希は俺から手を離し、すれ違いざまに犬に手を振っている。
通りすがった後も振り返り、しっぽをゆらゆら動かす後ろ姿を眺めていた。
「何か、変に緊張すんだけど」