ビターチョコレート
―――そんなハートウォーミングな思い出もあったっけな。

目の前で楽しそうに女の子と話すみっくんを眺めながら想い出に耽り、私はワインをチビリと口に含む。

「でも偶然だよね。まさかお隣に住んでる同級生と飲み会で再会するなんて。もしかして運命?」

優香が無邪気に言うもんだから私は苦笑いして受け流す。

30歳になったみっくんはとても素敵な紳士に成長していた。

凡庸でこれといって人より秀でたところのない私とは大違い。みっくんは殆ど人より秀でている。

「歳が同じだから一緒に遊んだりしたこともあったけど、物心つく前だし。中学は別々だったからお隣といってもそんな交流があった訳ではないので」

これは本当。

みっくは中学から私立に行き、次第に私達の距離は広がって行った。

高校時代、街で彼女と一緒に歩いているみっくんを時折見かけた。

地味だけどよく見るとカワイイという男が好む典型的な女子だった。

当時進学校に通う真面目なみっくんは酷く退屈に見えて自分から交流を持つこともなかった。

みっくんも公立高校に通いチャラチャラ遊び歩いている私には興味はなかったようだしね。

幼馴染なんて大抵そんなものだ。
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