ビターチョコレート
それが皮肉にもこんな形で再会するとはな。

しかもまざまざとその差を見せつけられて。

「それに赤城さんは既に実家を出られてますしね」

魅力的な紳士となった幼馴染を気安くみっくん、と呼ぶのはさすがに気が引ける。

「大槻さんはまだ実家ですか?」

みっくんは柔らかな笑みを浮かべたまま尋ねる。

「そうですね」と、さりげない口調を装う。

「いいですね。洗濯とかしてもらえて」

そういってみっくんはクスリと笑った。

口調は穏やかだけど、なんだか馬鹿にされているようでちょっと気分が悪い。

だけど私以外は特に気に留めている様子もないので単なるやっかみからくる被害妄想なのかと思い直す。

「大槻さんは現在どういったお仕事をされているのですか?」

みっくんは質問を重ねる。

「派遣でメーカーの事務をしています」

そうですか、とみっくんは穏やかな笑みのまま言う。
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