ビターチョコレート
「結婚相手を探すのもよいですが、30を過ぎると自立した女性が求められるものですよ。若いころとは違うのですから」

笑顔のままみっくんは私の痛いところを1㎜の狂いもなく的確に刺して来た。

優しい顔をしてなんて嫌な男…

昔はあんなに可愛かったのに。

えばりくさっていた私、それに従うみっくん。

その構図はいまやすっかり逆転していた。

「赤城さん、美羽子はこれまで色々あって…」

「いいの、優香」

さすがにみっくんが言い過ぎだと感じたようで優香がフォローしようとしたけれど、私は途中で言葉を遮った。

「確かに、その通りですね」

そう言って私は鞄からお財布を出し、なけなしの一万円札を抜き取ると勢いよくテーブルの上に置いた。

「今日はここで失礼します」

そう言って私は席を立つ。

「優香ごめんなさい。また連絡するね」

引き攣った笑みのまま友人に挨拶する。

優香も呆気にとられていたのか、無言のまま何度も頷いた。

大きな目を更に大きく見開いているみっくんを一瞥すると、私は踵を返し店の出口へと足早に向かう。

外へ出ると駅へ向かって一目散に走りだした。
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