ビターチョコレート
「あの、大槻さん―」

「お裾分けです。いつもお土産をいただいているので。私が作った物なのでお口に合わないかもしれませんがよかったら食べてみてください、と奥様にお伝えください」

みっくんがなにか言いかけていたけど、私は用件を一気にまくし立てる。

「では、失礼します」

そう言い残すと踵を返し、一目散に家へと逃げ帰る。

みっくんとは、最初のコンタクト以外、一切目を合わせる事はしなかったのでどんな表情をしていたかわからなかったけれど、きっと呆れているに違いない。

「ただいま」

むっつりとした表情で帰宅すると、そのまま自室へ戻ろうとする。

「赤城さんのお母さんにちゃんとお礼言った?」

しかし、リビングから母に声をかけられる。

「みっくんが出て来たから渡しといた」

あらま!と言って母は口に手を当てる。

「みっくん帰ってたのー?だったら私が行けば良かったわぁ!」

心底そうして欲しかった。
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