ビターチョコレート
そしてそれから一カ月後―――

仕事が終わり最寄の駅へと到着する。

腕時計に目を落すとすでに22:00を過ぎていた。

先月から六本木一丁目にある外資系の化粧品会社で正社員として働き始めた。

前職は金融関係の仕事をしていたので、その経験を生かし経理を担当している。

とは言ったものの、アジアの外れにある小さな島国の支社なので人員はそれほど配置されておらず、三十人程度の小さな会社だ。

そのため、経理の他に総務庶務などの事務全体も任されている。

社長はダンディーなおじ様で私が仕事に追われて不機嫌になると『ごめんね、みわこちゃん』と言っては美味しいランチをご馳走してくれる。

今日も社長のわかりやすーい飴とムチによって押し付けられた貯蔵品報告の資料を作成していて21:00過ぎまで仕事が終わらなかった。

ICカードを機械にかざして改札を出る。

「あ!」

後ろから声を掛けられて思わず振り向いた。
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