ビターチョコレート
そこにはすらりと背の高い好青年の姿があった。

げ…みっくん。なんでいるんだ。

本日は明るいブルーのセーターに黒のトレンチコートを羽織っている。

私は小さく会釈をするとそのままスタスタ歩きだす。

「ちょっと!あの待ってください」

後ろからみっくんが追っかけて来た。

疲れている時にまた何か意地悪な事を言われると思うと気が滅入る。

私は歩く速度を速めて聞こえないフリをする。

しかしながら足の長いみっくんはいとも簡単に私に追いついて隣を並んで歩く。

駅前の商店街を抜けると、辺りは閑静な住宅街になっている。

シンと静まり帰った夜道に私とみっくんの足音が響く。

「仕事帰りですか?」

「はい」

会話をしたくないので言葉少なめに返す。

「随分遅いですね。派遣なのに」

私はみっくんに鋭い視線を向ける。しまった…と言わんばかりにみっくんはハッと目を見開いた。

「就職しました。小さな化粧品会社ですけど」きっとあなたは名前も知らないような。
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