ビターチョコレート
「だってあの場で『みっくん』はないでしょう」

「親密そうな感じがするじゃないか」

大きな瞳で顔を覗きこまれて、思わず赤くなってしまった。

「勘違いされたら迷惑かと思って」

私は苦笑いを浮かべて俯いた。

ちょっと性格には問題はあるけれどもそれを以ってしても魅力的なみっくん。

二人の間には縮まることのない距離が出来てしまったような気がして親しげに接することなんて出来なかった。

突然にゅと頬っぺたを摘ままれる。

「それ本気で言ってるの」

そのまま強制的に上を向かされる。

「だって…みっくんが…あまりにも素敵になってしまったんだもん」

思わず本音が口を突いて出ると、みっくんは途端に顔を真っ赤にして私の頬っぺたから手を離す。

「もんのすごく避けてたじゃなか。俺と会うとけがらわしい物でも見るような目つきになってぴゅっと逃げる」

みっくんは口元を手で隠し、目を泳がせながら言う。

何故だかすごく動揺しているようだ。

「みっくんにまた意地悪な事を言われるとすごく傷つくから」

私は唇を尖らせる。
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