アスファルト
~終い~
「ははは、アンタ本当に酷い母親だねぇ。」
「はい、すみません。」
「まぁいいや。で、どうする?いくら必要なの?」
いかにも長い付き合いというのが口調でわかる。
所謂(街金)というやつ。
オールバックの髪型に黒いスーツでタバコを吹かしている。
後ろにはまだ入社したばかりなのだろう、
必要以上に意気がった若い男達が一緒になってこちらを
嘲笑っている。
緊張ではない、恐怖でもない・・・
胸騒ぎみたいな感覚だった。
父と母の血が流れている。
そう感じざるを得ない。
先程まで確かに感じていた胸騒ぎは何処かへ消えていた。
「とりあえずこれでひと安心」
とさえ思っていた。
歯車は壊れなかった。
動いてはいけない部分が動き出しただけ。
ぶっ壊れてくれていたらアタシに明るい未来は来たのか。
それもそれでないか。
「本当にごめんね、貴方には迷惑掛けないから。」
「まぁ既に迷惑だよね?はは・・・」
「うん・・・でも返済はちゃんとするから。」
「どっかで昼でも食べない?」
久し振りの母と2人での外出。
事が済めばウキウキするような、そんな感じで居た。
父は母が生活の為していた借金を知らない。
いや、知らない筈がない。
一つ屋根の下暮らしているのに知らない訳がない。
根っからの糞野郎だな。
都合の悪いことは完全見て見ぬ振り。
予想通りなのか、早速滞る返済。
今思えば当たり前だ。
返せる見込みがあるなら、きっと初めから借りない。
「誰か知らないけど、男の人から電話入ってるよ。」
「え?あ、はい。ありがとうございます。」
「もしもし、お電話変わりました。」
「あ、もしもし?わかる~?この前はありがとうね~。」
街金のその人だった。
職場に電話してきた。
「ごめんね~、お母さんと電話繋がらなくて娘さんに掛けちゃった~」
これっぽっちも悪びれなく謝ってくる男。
「あ、いえ。何かありましたか?」
「いやいや、今日お金返してくれる約束でしょ~。」
「あ、そうなんですか。」
「お母さんから聞いてない?」
「はい・・・。」
「本当ダメな母さんだね~あははは~。」
震えた。
こうなることはわかっていた。
母へのものか自分へのものかわからない怒りで
吐きそうになった。
「とりあえずうちも借したもの返してもらわないと困るわけよ。」
「はい。」
「まぁ娘さん可哀想だけど。ねぇ?」
「はい・・・。」
「今いくら持ってる?5千円でもいいからさ、誠意見せてよ。」
少し前に母と2人訪れた場所。
エレベーターが開くとすぐ受け付け。
「あ~娘さん!ごめんね~!ははは。」
何が可笑しいのか笑っている男。
「あの、これ。」
「あ~、はいはい。ありがとうね~。」
「・・・。」
「家帰ったらちゃんと返してもらいなよ~?」
微笑みながら領収書を渡してくる。
それを受け取りそそくさとその場を去った。
「ねぇ、迷惑掛けないって言ったよね?」
「ごめん。」
「お金返してよ!」
「ごめん、返せない。」
「はぁ?返せよ!」
「今日の夕飯も買えない・・・。」
「・・・。はい・・・。」
新手のカツアゲだ。
こうやってアタシから根こそぎ奪っていく。
「ごめん、今お店の外に居る!出て来れる?」
深刻な顔でアタシを待つ母の姿。
用件なんて聞かなくてもわかってる。
一応リアクションはしておく。
「いい加減にしてよ!アイツに働けって言いなよ!」
「うん、ごめん。」
「なんでアタシばっかりなの?」
「ごめん。」
借金を返すための借金。
こうなればもう終いだ。
「なんとかなる」
絶対に思ってはいけない。
「あ~こんにちは~。」
背が高く溌剌とした感じのおばさん。
後ろには正反対の印象のおじいさんが座っていた。
「はい、じゃあ5万円ね!」
「ありがとうございます。」
アタシに許可なく手続きを済ませて居たのだろう。
行ってすぐに渡された現金。
「あんまり娘さんに迷惑掛けたらダメよ!」
「はい。」
自分の娘の前で怒られるってどんな感じ?
母は感情のない人間なんだな。
この時既に4社で金を借りてしまっていた。
「お客様申し訳ありません。当店、開店は10時からでして・・・」
「すぐ済むから。」
この前のおじいさん。
「悪いな、母さんと連絡が取れなかったものでな。」
それ以上は言わないで姿を消してくれた。
優しささえ感じた。
無理矢理店に入ってきたおじいさんを止めていた店長に
そのあと何を聞かれ何と答えたか思い出せない。
「外線1番にお父さんから電話入ってるよ!」
鳥肌が立ち冷や汗が吹き出してきた。
「もしもし・・・」
「お前何やってんだ!金借りたならしっかり返せよ!」
「・・・」
「おい、聞いてんのか!今うちに電話入ったんだよ!」
普通の人ならこの辺で堪忍袋の緒が切れるのかな?
いや、もっと前にとっくに切れてるよな。
「いや、でもそれお母さんが借りたんだよ」
「だからなんだ!人のせいにするな!」
「えっ?」
「名前貸したのはお前だろ!お前が悪いんだよ!」
この日から店の電話が鳴る度動悸がするようになった。
街金より父からの方が怖かった。
「もう泣かなくていいよ、俺も悪かったから」
「うん、ごめんね」
また、
悪いなんて思っていないのに謝る母。
「とりあえず今日電話が来たところを含めて、自分の名前のところは
責任持って自分で片付けろよ」
父が言っていることの意味が理解出来なかった。
自分を抑えた。
必死で・・・
「はい、すみません。」
「まぁいいや。で、どうする?いくら必要なの?」
いかにも長い付き合いというのが口調でわかる。
所謂(街金)というやつ。
オールバックの髪型に黒いスーツでタバコを吹かしている。
後ろにはまだ入社したばかりなのだろう、
必要以上に意気がった若い男達が一緒になってこちらを
嘲笑っている。
緊張ではない、恐怖でもない・・・
胸騒ぎみたいな感覚だった。
父と母の血が流れている。
そう感じざるを得ない。
先程まで確かに感じていた胸騒ぎは何処かへ消えていた。
「とりあえずこれでひと安心」
とさえ思っていた。
歯車は壊れなかった。
動いてはいけない部分が動き出しただけ。
ぶっ壊れてくれていたらアタシに明るい未来は来たのか。
それもそれでないか。
「本当にごめんね、貴方には迷惑掛けないから。」
「まぁ既に迷惑だよね?はは・・・」
「うん・・・でも返済はちゃんとするから。」
「どっかで昼でも食べない?」
久し振りの母と2人での外出。
事が済めばウキウキするような、そんな感じで居た。
父は母が生活の為していた借金を知らない。
いや、知らない筈がない。
一つ屋根の下暮らしているのに知らない訳がない。
根っからの糞野郎だな。
都合の悪いことは完全見て見ぬ振り。
予想通りなのか、早速滞る返済。
今思えば当たり前だ。
返せる見込みがあるなら、きっと初めから借りない。
「誰か知らないけど、男の人から電話入ってるよ。」
「え?あ、はい。ありがとうございます。」
「もしもし、お電話変わりました。」
「あ、もしもし?わかる~?この前はありがとうね~。」
街金のその人だった。
職場に電話してきた。
「ごめんね~、お母さんと電話繋がらなくて娘さんに掛けちゃった~」
これっぽっちも悪びれなく謝ってくる男。
「あ、いえ。何かありましたか?」
「いやいや、今日お金返してくれる約束でしょ~。」
「あ、そうなんですか。」
「お母さんから聞いてない?」
「はい・・・。」
「本当ダメな母さんだね~あははは~。」
震えた。
こうなることはわかっていた。
母へのものか自分へのものかわからない怒りで
吐きそうになった。
「とりあえずうちも借したもの返してもらわないと困るわけよ。」
「はい。」
「まぁ娘さん可哀想だけど。ねぇ?」
「はい・・・。」
「今いくら持ってる?5千円でもいいからさ、誠意見せてよ。」
少し前に母と2人訪れた場所。
エレベーターが開くとすぐ受け付け。
「あ~娘さん!ごめんね~!ははは。」
何が可笑しいのか笑っている男。
「あの、これ。」
「あ~、はいはい。ありがとうね~。」
「・・・。」
「家帰ったらちゃんと返してもらいなよ~?」
微笑みながら領収書を渡してくる。
それを受け取りそそくさとその場を去った。
「ねぇ、迷惑掛けないって言ったよね?」
「ごめん。」
「お金返してよ!」
「ごめん、返せない。」
「はぁ?返せよ!」
「今日の夕飯も買えない・・・。」
「・・・。はい・・・。」
新手のカツアゲだ。
こうやってアタシから根こそぎ奪っていく。
「ごめん、今お店の外に居る!出て来れる?」
深刻な顔でアタシを待つ母の姿。
用件なんて聞かなくてもわかってる。
一応リアクションはしておく。
「いい加減にしてよ!アイツに働けって言いなよ!」
「うん、ごめん。」
「なんでアタシばっかりなの?」
「ごめん。」
借金を返すための借金。
こうなればもう終いだ。
「なんとかなる」
絶対に思ってはいけない。
「あ~こんにちは~。」
背が高く溌剌とした感じのおばさん。
後ろには正反対の印象のおじいさんが座っていた。
「はい、じゃあ5万円ね!」
「ありがとうございます。」
アタシに許可なく手続きを済ませて居たのだろう。
行ってすぐに渡された現金。
「あんまり娘さんに迷惑掛けたらダメよ!」
「はい。」
自分の娘の前で怒られるってどんな感じ?
母は感情のない人間なんだな。
この時既に4社で金を借りてしまっていた。
「お客様申し訳ありません。当店、開店は10時からでして・・・」
「すぐ済むから。」
この前のおじいさん。
「悪いな、母さんと連絡が取れなかったものでな。」
それ以上は言わないで姿を消してくれた。
優しささえ感じた。
無理矢理店に入ってきたおじいさんを止めていた店長に
そのあと何を聞かれ何と答えたか思い出せない。
「外線1番にお父さんから電話入ってるよ!」
鳥肌が立ち冷や汗が吹き出してきた。
「もしもし・・・」
「お前何やってんだ!金借りたならしっかり返せよ!」
「・・・」
「おい、聞いてんのか!今うちに電話入ったんだよ!」
普通の人ならこの辺で堪忍袋の緒が切れるのかな?
いや、もっと前にとっくに切れてるよな。
「いや、でもそれお母さんが借りたんだよ」
「だからなんだ!人のせいにするな!」
「えっ?」
「名前貸したのはお前だろ!お前が悪いんだよ!」
この日から店の電話が鳴る度動悸がするようになった。
街金より父からの方が怖かった。
「もう泣かなくていいよ、俺も悪かったから」
「うん、ごめんね」
また、
悪いなんて思っていないのに謝る母。
「とりあえず今日電話が来たところを含めて、自分の名前のところは
責任持って自分で片付けろよ」
父が言っていることの意味が理解出来なかった。
自分を抑えた。
必死で・・・