親愛なる君が人魚であるはずがない
姫は忘れていました。
海を離れて陸へあがれば一生戻ることはありません。
優しいユーリには言えませんでしたがこの物語には悲しい結末があります。
「…うん。ありがとう」
「どういたしまして」
はにかむ彼女の顔を曇らせたくなくてつい言えませんでした。
「脚をちょうだい」
「代わりに声をいただくよ?」
意地悪く返すユーリの表情は言葉とは真逆の優しさで溢れています。
「うん、王子の元へ行けるなら構わない」
さようなら、ユーリ。
一生会えなくなるね。
実は死にに行くの。
王子に捨てられた悲しみで海の泡になる。
泡になったらまたユーリに会えるかな?