親愛なる君が人魚であるはずがない

姫は不敵に笑って声を差し出しました。

ユーリが褒めてくれる低くて甘い姫の声は消えてなくなりました。

喉から漏れるのは空気の振動だけです。


「ゲッホッ…ゴホ…」


姿を人間に変えられた瞬間肺を恐ろしく海水が圧迫します。



「あっ、ごめん!順番間違えたね!?」


最後の最後までユーリのボケに付き合わされるなんて…


このまま死んでしまったら話が進みません。


「さようなら、レン」


ユーリは圧の変化で気を失った姫を抱えて海面へ泳ぎだしました。


「大好きよ」


唇から空気を送り込むとユーリは浜辺に姫を横たえてその場を立ち去りました。


その場を目撃されているとも知らないで。

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