臨死体験
『はーはー』 ひどい汗、 たかしは辺りを見回した。どうやらここは廃病院の跡地のようだ。割れて散乱した硝子、壊れてボロボロのベッド、色あせて薄汚れたカーテン、そして部屋の真ん中に大きな鏡台が置いてある。 たかしはふいに鏡台に近づいた。 辺りが暗いため鏡に 映るものは暗闇だけだった。たかしは電気をつけようとスイッチを壁つたいに探りはじめる。 『痛っ 』足に痛みを感じ、足の裏を凝視した。どうやら硝子片がささっているようだ。 たかしは少し冷静になった。(僕は生きている、足が生えている。) どうやら死んではいないようだ。しかし生きた心地もしない。 再び電気のスイッチを探しだそうとしたとき携帯の着信音がなった。『どこだ どこにある』 部屋のどこかで携帯が鳴っている。 『ピピピピ …』 たかしは部屋を見回すが携帯は見つからない。ふいに先の大きな鏡台を振り返ると、緑色に光る物が映りこんでいた。 鏡の映す物体を確認しようと近づくが、鏡台が映す位置に物体はない。『おかしいな』 そう思ったその時『おい、たかし』 またあの声がきこえる。 まぎれもなく自分の声。 声 『目を閉じろ』 たかしは声に言われるままに目を閉じた。 すると、床に着信音を発している緑色の物体を見つけた。