束縛の旧クラスメート
人見知りでも、クラスに少なくは話せる人がいる。
小学校の頃からの旧友の亜美と麻衣。
優しい二人はこんな人見知りな私に気さくに話しかけてくれて、
友達として受け入れてくれた。
今では3人でひと組の仲良し。
私にとってこの二人は大切な人だった。
休み時間に二人は私の席に来てくれた。
亜美がぽんっと私の肩を叩き、明~希!と名前を呼ぶ。
「久しぶり。体調どう?」
麻衣も優しく微笑みかける。
「明希ちゃんがいない1年間、本当に寂しかったよ。
病気はもう大丈夫?」
私はうん、と笑顔で答えた。
「薬を飲んでたら、だんだんよくなるでしょうって。
激しい運動さえしなければ安全だって言ってくれた。
二人とも、心配かけてごめんね。」
私は約半年間、心臓の病気で入院していた。
中1の3月頃、体育の授業中突然重い発作を起こして倒れてしまったのだ。
あのときは不整脈がなかなか治らなくて、治療もなかなか進まなくて息苦しかった。
だけど、病院を転々として
自分に合う病状の薬を見つけた時から徐々に良くなった。
不整脈が減り、退院して今までの日常をやっと取り戻すことが出来たんだ。
学校に戻ることが出来たのは半年前だが、学力の考慮もあって保健室の隣の小部屋で夜まで補講を受けていた。
そして今やっと教室に戻れたってこと。
亜美と麻衣は入院して以来会えていなかったから、とても心配してたと思う。
倒れた時に一緒にいたからなおさら。
亜美はいいのいいの、と手をふった。
「明希が帰ってきてくれて本当に私安心したわ!あんた、倒れた時息が止まりかけてたからさ……」
麻衣も続く。
「明希ちゃんが謝る必要なんて全くないよ。無事でよかった。
教室にいなかったら私、感動で泣いちゃうかも。
また3人で遊びに行こうね。」
「うん!」
幸せな一時。
新しいクラスに二人がいて本当によかった。
その時、隣の席から声がした。
低くてしゃがれた女子の声。はっと亜美と麻衣が顔色を変える。
「ねぇ、金魚を飼ってるって本当なの?」
私は隣に視線をやった。
そこにはでっぷりと太った身長が低い女の子が一人。
手首にピンク色のリストバンドをはめながら、彼女は私に不気味に笑いかけた。
私はええ…と、とどもる。
そして困惑しながらも、答えた。
「うん、二匹飼ってるよ。」
彼女はふーん、と鼻をならす。
「アタシも飼ってるの。今日からアタシたち、友達でいい?」
「え?」
いきなりの友達認証に、私はさらに戸惑った。
亜美があのさ、と口を出す。
「この子人見知りだからさ、いきなり友達はちょっと……」
すると、一瞬で隣の席の子の顔は豹変した。
「アタシは今明希ちゃんと話してんの‼あんたは口出さないで‼」
ヒステリーに近い叫び。低い声が途端に甲高くなる。
するとクラスの中でもギャルチックなグループから笑い声が聞こえた。
見ると、彼女たちはこの女の子を馬鹿にするように指差している。
女の子が立ち上がり、ちょっと!と彼女たちに近寄った。
「何こっち見て笑ってんの‼」
彼女たちはきゃー、こわーいと大笑いしながら分散して女の子から逃げる。
そのうちの一人を女の子は追いかけて、教室を出ていってしまった。
男子もゲラゲラと笑ってそれを見ている。
唖然としている私に、亜美は声をかけた。
「大丈夫?明希。」
「う、うん……。あの子、苛められてるの?」
私がそう尋ねると、麻衣が言葉を濁してから答える。
「あ~似てるけどちょっと違うかな。」
そしていきさつを話してくれた。
「あの子は一年前に転校してきた神崎奈々。私たちとは別のクラスだったんだけど、彼女の噂は絶えなかったよ。
癇癪を起こして壁にヒビを入れたりとか、返ってきたテストをビリビリ破って大泣きしてたりとか……。
次第に皆は引いてきたんだけど、ギャルの子たちやヤンキーたちは面白がって彼女を馬鹿にするようになったわけ。
要するに性格に難ありってこと。明希も気をつけたほうが良いよ。」
すると、周辺にいた男子もそーそー!と頷いた。
「関わらないのが一番だよな!」
「面倒ごとはマジ勘弁だわ」
私は隣の席を見る。
そこには画面が割れたスマホ。ぐちゃぐちゃに丸められている紙。
皆の言う通り、かなり危ない香りがした。
小学校の頃からの旧友の亜美と麻衣。
優しい二人はこんな人見知りな私に気さくに話しかけてくれて、
友達として受け入れてくれた。
今では3人でひと組の仲良し。
私にとってこの二人は大切な人だった。
休み時間に二人は私の席に来てくれた。
亜美がぽんっと私の肩を叩き、明~希!と名前を呼ぶ。
「久しぶり。体調どう?」
麻衣も優しく微笑みかける。
「明希ちゃんがいない1年間、本当に寂しかったよ。
病気はもう大丈夫?」
私はうん、と笑顔で答えた。
「薬を飲んでたら、だんだんよくなるでしょうって。
激しい運動さえしなければ安全だって言ってくれた。
二人とも、心配かけてごめんね。」
私は約半年間、心臓の病気で入院していた。
中1の3月頃、体育の授業中突然重い発作を起こして倒れてしまったのだ。
あのときは不整脈がなかなか治らなくて、治療もなかなか進まなくて息苦しかった。
だけど、病院を転々として
自分に合う病状の薬を見つけた時から徐々に良くなった。
不整脈が減り、退院して今までの日常をやっと取り戻すことが出来たんだ。
学校に戻ることが出来たのは半年前だが、学力の考慮もあって保健室の隣の小部屋で夜まで補講を受けていた。
そして今やっと教室に戻れたってこと。
亜美と麻衣は入院して以来会えていなかったから、とても心配してたと思う。
倒れた時に一緒にいたからなおさら。
亜美はいいのいいの、と手をふった。
「明希が帰ってきてくれて本当に私安心したわ!あんた、倒れた時息が止まりかけてたからさ……」
麻衣も続く。
「明希ちゃんが謝る必要なんて全くないよ。無事でよかった。
教室にいなかったら私、感動で泣いちゃうかも。
また3人で遊びに行こうね。」
「うん!」
幸せな一時。
新しいクラスに二人がいて本当によかった。
その時、隣の席から声がした。
低くてしゃがれた女子の声。はっと亜美と麻衣が顔色を変える。
「ねぇ、金魚を飼ってるって本当なの?」
私は隣に視線をやった。
そこにはでっぷりと太った身長が低い女の子が一人。
手首にピンク色のリストバンドをはめながら、彼女は私に不気味に笑いかけた。
私はええ…と、とどもる。
そして困惑しながらも、答えた。
「うん、二匹飼ってるよ。」
彼女はふーん、と鼻をならす。
「アタシも飼ってるの。今日からアタシたち、友達でいい?」
「え?」
いきなりの友達認証に、私はさらに戸惑った。
亜美があのさ、と口を出す。
「この子人見知りだからさ、いきなり友達はちょっと……」
すると、一瞬で隣の席の子の顔は豹変した。
「アタシは今明希ちゃんと話してんの‼あんたは口出さないで‼」
ヒステリーに近い叫び。低い声が途端に甲高くなる。
するとクラスの中でもギャルチックなグループから笑い声が聞こえた。
見ると、彼女たちはこの女の子を馬鹿にするように指差している。
女の子が立ち上がり、ちょっと!と彼女たちに近寄った。
「何こっち見て笑ってんの‼」
彼女たちはきゃー、こわーいと大笑いしながら分散して女の子から逃げる。
そのうちの一人を女の子は追いかけて、教室を出ていってしまった。
男子もゲラゲラと笑ってそれを見ている。
唖然としている私に、亜美は声をかけた。
「大丈夫?明希。」
「う、うん……。あの子、苛められてるの?」
私がそう尋ねると、麻衣が言葉を濁してから答える。
「あ~似てるけどちょっと違うかな。」
そしていきさつを話してくれた。
「あの子は一年前に転校してきた神崎奈々。私たちとは別のクラスだったんだけど、彼女の噂は絶えなかったよ。
癇癪を起こして壁にヒビを入れたりとか、返ってきたテストをビリビリ破って大泣きしてたりとか……。
次第に皆は引いてきたんだけど、ギャルの子たちやヤンキーたちは面白がって彼女を馬鹿にするようになったわけ。
要するに性格に難ありってこと。明希も気をつけたほうが良いよ。」
すると、周辺にいた男子もそーそー!と頷いた。
「関わらないのが一番だよな!」
「面倒ごとはマジ勘弁だわ」
私は隣の席を見る。
そこには画面が割れたスマホ。ぐちゃぐちゃに丸められている紙。
皆の言う通り、かなり危ない香りがした。