櫻の園


携帯電話から再生される声は、必死にあたしに語りかけていた。

届いていないかもしれないと知っていながら、それでもみんなは――。


「バカじゃないの…」


月明かりが、あたしの素足を銀色に染める。足もとに浮かび上がる陰影は、あたしよりもほんの少し長かった。


…あたしの代わりなんて、探せばどこにでもいるのに。


それでもまっすぐな彼女たちは、あたしの仲間は、あたしの弱さを全て、無条件に許そうとするのだ。


「…みんな、ほんと…バカだ…っ」




ただ、涙がとめどなく溢れた。










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