櫻の園


三日間の謹慎は解けていたが、あたしの目覚まし時計は未だに機動していなかった。

学校に行かなくなってもう四日目の夕方。もう謹慎期間ではないことはわかっていただろう家族も、ベットに塞ぎ込むあたしを見て何も言わなかった。


部屋に差し込む光が、徐々に赤みを失くす。黒い世界が、すぐそこに迫っているのだ。

鏡の中に映る自分はげっそりとしていて、見るからに不健康な痩せ方だった。


…考えれば考えるほど、もうどうすればいいのかわからなかった。

枝分かれした道の真ん中で、あたしはただ進むことができずにうずくまっているだけだった。


ベットにうつぶせになり枕に顔を埋めていると、頭がぼうっとして夢か現実だか区別がつきにくくなる。

そんな時、枕もとに放置してある携帯が震えて、チカチカと光り出した。そういえばお母さんが、早く帰れるようなら連絡するとか言っていたような気がする。

現実の世界だったのか…ぼんやりそんなことを思いながら携帯に手を伸ばした。


「…はい?」

「何寝ぼけた声出してんだよ、桃」


驚いてベットから跳ね起きた。勢いあまってその拍子にベットから転がり落ちてしまった。

ゴン、と頭を打つ。嫌でも現実の世界に引き戻されることになった。


「…大丈夫か?なんか変な音したけど」


大丈夫なんかじゃない。頭をさすりながらジンジンとわいてくる痛みに顔をしかめた。

大丈夫じゃない、これっぽちも。頭は痛いわ、それになんで洲がこんなに普通に電話してくるのかわからない。

あたしが黙っていると、電話口でまた洲の声がした。


「桃、外見て」

「外……?」

「いいから」


言われたとおりに、しぶしぶ窓の外を見る。そして目を丸くした。家の門の前で、携帯を耳にあてた洲がこちらに向かって手を挙げたところだった。

慌ててカーテンを引くと、まともな服を引っ張り出す。ジーンズに足を突っ込み、顔を洗うと勢いよく玄関に飛び出た。

あたしがあまりに余裕のない表情だったのだろう、洲はおかしくてたまらないといったように噴き出した。


「なんで…?」



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