櫻の園
「うそ…」
佳代先生の言葉が頭に到達するまで、しばらく時間がかかった。
ジワジワと込み上げてくる喜び。
─"桜の園"が、できる。
「やったぁ〜!!桃〜っ!!」
「信じらんないっ!!あたしたち、できるんだよ!!」
あっと言う間に広がっていく笑顔。
あたしたちは手を取り合い、嬉しさのあまり抱きしめ合った。
あたし、できるんだ。
諦めなくて、よかったんだ。
涙が滲む。嬉し涙なんてハッキリ名付けられる涙を流すなんて、本当にいつぶりなんだろう。
あたしたちを微笑んで見ていた佳代先生の顔もきっと、あたしのくしゃくしゃな顔とそっくりだった。
「今日の放課後からさっそく厳しくやるわよ!全校中に恥ずかしいもの見せるわけにはいかないんだからね!!」
「はーいっ!!」
世界は眩しかった。
空も、木々も、太陽も。全てがあたしに向かって、微笑みかけている気がした。
授業中だなんて少しも気にせずに、あたしたちはいつまでも喜び合っていた。
──時は過ぎ行く。
桜の園の中に、そんなセリフがあった。
伝統、過去、重い鎖に縛られていた日々。
長く止まっていた時の流れ。
ようやく動き出したその流れは、あたしたちにやっと、芽吹きの春を連れてきたのだ。
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