櫻の園

たっぷりの夕食を終え、いろいろ話しながら片付けをした。

洗い物なんて久しぶりだ。いつの間にこんなに手際がよくなったのか、お姉ちゃんは滑るようにお皿を綺麗にしていく。


学校の話とか、結婚式ではどんなドレスを着るとか。

何年か分の会話が一気に流れ出るように、あたしたちは途切れることなく話し続けた。

中でも竹内さんとの出会いの話は、最初は最悪なものだったとお姉ちゃんが怒り出すので思わず笑ってしまった。


…そういえばお姉ちゃんがこの家にいるのも、もう一カ月とないのだ。そう思うと無性に寂しくなる。


「さーて!じゃあそろそろお風呂入ってこようかな!」


皿洗いの腕まくりを下ろすと、お姉ちゃんはうんと大きく伸びをする。

そういえばもうそんな時間かと、時計を見て初めて気がついた。

カーテンの隙間から、真っ暗な闇が顔を見せている。


「…桃」


リビングのドアに手をかけたまま、お姉ちゃんが振り返った。


「…明日、見に行くからね」



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