櫻の園
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「…72点ってとこかな」
美登里の呟きに、思わず吹き出してしまいそうになった。
「なに、美登里厳しいね?」
「だってあの葵の相手だよ〜!?まぁ優しそうな人だったけどさぁ」
口を尖らせながら、それでも美登里はどこか嬉しそうで、満足気に見える。
「…それにしても葵、チョーきれいだったよね」
「ねえ!!もうあたし見とれちゃってさぁ、口半開きだったもん」
教会から出たところの階段で、それぞれに花かごを持ちながら並ぶあたしたち。
背伸びしたような高いヒールばかりが、一列に連なる。
「あ!出てくるよ!!」
ワァッとわいた歓声。
葵たちが扉から現れた瞬間、花びらが一斉に頭上に舞った。
「おめでとう!!」
「すっごいキレイだよ、葵っ!!」
花びらと共に舞い上がる言葉たち。
葵はきらびやかな笑顔で、その全てを受け止めていく。
あたしの隣で拍手を贈る赤星さんは、そんな葵をとても眩しそうに見ていた。
細められた目。
吸い込まれそうな横顔。
いつか見たことがあるその表情は、あたしの心を少しだけ揺さぶる。
「あーおーいーっ!!」
おめでとう、と耳に痛い声で叫ぶ美登里。
こちらに気づいたらしい。振り向いた葵はあたしたちの姿をとらえると、幸せ溢れんばかりに顔を崩した。
「みんな、来てくれたんだ!!」
「あったりまえじゃん!!」
「てか葵、またさらにキレイんなったね〜!!」
騒がしく葵を囲む美登里と奈々美。
そんな様子をほほえましく思っていると、葵がこちらに近づいてきた。
「桃!演奏すごいよかった!!ほんとにありがとね」
「ううん、こちらこそこんな晴れ舞台に立ててよかったよ」
いまだ宙を舞う、祝福の花びら。
葵は優しく微笑むと、あたしの後ろに視線を向けた。
「赤星さんも…来てくれてありがとう」
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