櫻の園
赤星さんの瞳が揺れる。
一身に集められた光が、今にもこぼれそうだ。
葵はそっと赤星さんの手を握ると、そのまま持っていたブーケを手渡した。
「え……?」
「もらって?あたし、赤星さんに受け取ってほしかったんだ」
『あたしずっと、あなたに憧れてたの』
─"櫻の園"、当日。
中庭の情景が、頭の中に色鮮やかに蘇る。
向き合った二人。
流れ込んできた、暖かい気持ち。
『あがらない、おまじない』
赤星さんは優しい色に頬を染め、くしゃりと、本当に嬉しそうに顔を崩した。
「ありがとう」
教会の白い壁は、太陽の強い光を緩く、穏やかに反射する。
ゴーン、ゴーン…繰り返される鐘の音が、辺り一面に大きく響いていた。
「…おめでとう、小笠原さん」
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