櫻の園


するのとさせられるのでは、似ているようでまるっきり意味が違う。


自発か、強制か。


でも今のあたしは、そのどちらでもなかった。


希望。あたしは、みんなで"桜の園"がしたいのだ。



二人して本校舎の自分の教室に戻った時には、時計はもう授業が始まるギリギリを指していた。

一人だとあんなにも重いと思っていた教室の扉が、隣に赤星さんがついているだけでずいぶんと軽くなる。

美登里たちがたとえどんな反応をしても…落ち込んじゃいけない。あたしは諦めないし、もう一度彼女たちに頼み込むつもりだった。


"桜の園"を、もう一度やろう…って。


だからまさか、開いた途端に強烈なタックルが飛んでくるとは欠片も思っていなかったのだ。


「〜っ!?」

「ごめん桃ーっ!!!ほんとにほんとにものすごく果てしなくごめんなさいっ!!」

弾丸のように飛んできたその正体は、美登里の丸い頭。

あたしの腰回りに巻き付いては、早口でまくしたてる。その後ろには、馴染みのメンバーが何人かと、違うクラスのはずの奈々美まで気まずそうな面持ちで立っていた。


「な…なに、みんなどしたの…?」

「あの、ごめんね。桃…」

「あたしたち全然気が回らなくて。ずっと桃に任せっきりにしてたよね」

みんな口々に謝罪の言葉を言っては、ごめんと最後に付け加える。あたしはただあんぐりと口を開けてその様子を見ていた。

奈々美がためらいがちに一歩前へと進み出る。


「…これからはもっと頼って?みんなで作っていこう、"桜の園"」


腰に巻きついたままの美登里の腕が重い。

みんなしんみりとした顔をして、いつものふざけたあの雰囲気はどこへ行ったのやら。

あんなに悩んでいた自分が、ずいぶん昔のことだった気がした。

隣を見ると、赤星さんが頷いてにっこりと笑う。

息を大きく吸い込むと、あたしも飛びっきりの笑顔をまとって言った。


「…しょーがないなぁ、許してやるかっ!」


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