櫻の園
昨日から止まっていた空気が、息を吹き返すように流れ出す。

弾けるように、みんなに明るい笑顔が戻った。


「うわ、桃ったら何様〜?」

「っていうか美登里いい加減離れてよっ!」

「やーだー!桃ちゃん好きだもんっ!!」

「てか桃、聞いてっ!!あたしもうセリフばっちりだから!…六年前、父様が亡くなられ、ひと月あとに──」

「わー、今言わなくていいってば!!」


いつの間にか教室内の注目を集めていたあたしたち。

チャイムが鳴る。それはまるで集合の合図のようだった。

みんなの笑い声が、均一に鳴り響くチャイム音を打ち消すようにあたしの周りに広がっていた。




その日の放課後は、久しぶりにみんなが揃った。


蘇った空気に満ちた教室はキラキラと輝いて見え、みんなの瞳はそれぞれ、溢れんばかりに息づいていた。その空気を胸いっぱいに吸い込んで思う。


…あたしたちは今やっと、始まりを見つけることができたんだと。




その時のあたしは、一度見つけた光は、ずっとそのまま輝き続けると思ってた。



…そう、信じて疑わなかった。




それが嵐の前の静けさだとは、あたしは少しも気づいていなかったんだ。











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