元カレバンドDX
 少しの沈黙のあと、風太は「わかった」と言って顔を上げた。

 けれど、あたしの「泊まっていって」というお願いは、「ごめん」という言葉によって跳ねのけられた。

 風太を見送ったあたしは、またひとりになる。

 遊び人の彼氏の次は、酔って浮気しちゃう彼氏!?

 なんてちょっと、自虐的な自分もいたが、あたしの目は虚ろに、こころは沈んでいた。

「はぁ~。あたしって男運ないのかな~」

 それでもやっぱり自虐的になってしまうのは、免疫がついたせい?

 いくら近くにいても、風太のこころは風太にしかわからない。

 決して触れることのできない風太の繊細な部分に、これほどまでに踏み込みたいと願ったことはなかった。

 あたしの思い通りにできたらいいのに――

 幸せな恋愛は、わずかな確率の上に成り立っているのかもしれない。

 そんなアンニュイな気持ちも抱いて、あたしは夜の闇にもぐっていった。

 頬に涙の筋を光らせながら……。
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