元カレバンドDX
 ラジオ収録に向かう車中、珍しくベースの充晴(みつはる)が隣に座って来た。

「よう」

「珍しくない?」

「なんとなく」

 そう言って、あたしの横にでんと陣取る充晴は、眠たそうにあくびをした。

「みっつぅ~眠いの~?彼女のせいか?」

 ニヤニヤとからかうあたしに、充晴は鼻でフッと笑った。

「まじで、疲れたよ」

「でもストーカーになるといけないし、別れられないみたいな?」

 ふと、充晴の彼女の顔が浮かんだ。

「まぁ、がんばりなよ」

 あたしは充晴のひざをぽんと叩いて、軽快に鼻歌を奏でるのだった。
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