元カレバンドDX
「衣装、なに着ようかな~?」

「なんでもいいんじゃない?」

「だめ!可愛い洋服が着たいの!」

「あっそ」

 つれない充晴はいつものことだ。

 それに、“つれない”キャラは、あたしのツボでもある。

「じゃあ、みっつーはなに着るの?」

「普段着?」

「初ライブなんだから、びしっと決めようよ~!!ベースってモテるらしいよ~普段着なんかでいいの?」

「へ~なんでモテるの?」

「なんかね、軽音楽部の人から聞いたんだけど、ベースの低音が子宮に響いて感じちゃうんだって!!本当かどうかわからないけど」

「だから、ベースがモテるの?」

「う~ん、よくわかんなくなってきた……」

 充晴は、フンと鼻で笑ったあとに「お会計」と言った。

 外でごはんを食べるときは、たいてい充晴がおごってくれる。

 社会人で年上というのもあるけれど、こういうところが、「学生彼氏」と違って、こころもお財布もあったかくなる嬉しいところだ。

「ごちそうさま!」

 お店を出てから充晴に声をかけると、「おう」と言って、あたしの肩に手をかけた。
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