元カレバンドDX
 あたしが謝ると、ちょうど充晴が帰ってきた。

「おい、おまえもっと優しく言えよ」

 充晴があたしをかばうように、女性メンバーに注意をした。

「はいはい!」

 彼女は、府に落ちないような顔をして楽屋を出て行く。

 あたし以外の唯一の女性メンバーは、少し気が強いところがあって、あたしはなんとなく苦手だ。

 しかし、彼女は年上だし、後から入った新参者のあたしは何も言えず従うしかなかった。

そんなとき、いつも充晴があたしの言いたいことを言ってくれて、すごく心強い。

(やっぱりバンド内恋愛っていい!!)

「ありがと!早くステージ行こっ!!」

 とびきりの笑顔を放ったあたしは、充晴を連れて舞台へと足を進めた。

 ステージの上に立つと、照明がまぶしくて、うしろの方まではお客さんの顔が見えない。

あたしは、右側に立つ充晴に合図をしてから歌い始めた。

きらめく光を浴びながら、大好きな歌を大好きな人の隣で歌う。
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