元カレバンドDX
「……やっぱりもう付き合えない」

「やだ……やだよ!!なんで彼女がいるのに、そんなに簡単に他の人のこと好きになるの!?」

「……似てるんだ、振られた元カノに」

“元カノ”という言葉が出てきたことで、あたしは呆れてものが言えなくなった。

「おまえには悪いんだけど、また昔に戻るっていうか、これからはバンド仲間として付き合いたい」

「…………」

「聞いてる?だからこれからもよろしくってことで」

「……わ……かりました」

 他人行儀な口ぶりで、とりあえず「今日のところは失礼します……」なんて言って電話を切った。

充晴が過去を引きずるタイプだったなんて、気付かなかったしがっかりだ。

「なーんで、いつも電話で振られるんだ??」

 あたしは読んでいた本に再び目を落とした。

 それは女性向けの啓発本で、男性に愛されるためのルールが細かく記されているものだった。
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