元カレバンドDX
「愛されガールは別れ際も肝心……か……」

 読みかけの本をぱたりと閉じ、続きを読むことはもう止めた。

 バンドという夢があたしを支えてくれているのか、精神的に強くなったのか、それとも“元カノ”というワードにげんなりさせられたのか、充晴に振られたのにもかかわらず、意外と気丈な自分がいた。

 不思議と涙も出なかった。

「あーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 行き場のない想いを声に吐き出して、あたしはマンションの屋上に向かう。

 あたしの住んでいる小さなマンションの屋上には、大家さんの計らいで、ベンチがひとつ置いてあった。

 そのベンチに座り、空を眺める。

 濃紺の景色の中に、きらめく星が瞬いていた。

(あたし、絶対負けない……負けてなんていられない)

 何に対してなのか、自分でもよくわからなかったが、とにかくそう思った。

 だからあたしは、負けないことに決めたのだ。
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