元カレバンドDX
「あんたさ~、どうせ色仕掛けで充晴に迫ったんでしょ?それで振られたら、今度はバンドを乗っ取る気?あんたの思い通りになんてさせないから!」

「そんな!バンドを乗っ取る気なんてありません!それに、恋愛は恋愛だったし、バンドとは関係ありませんから!」

「は!?何を今さら。“みっつーとメジャーデビューする~♪”なんて思ってたんじゃないの??言っとくけど、このバンドは充晴とあたしのバンドなんだから!!あとから入ってきたあんたに、発言権はない!!!」

「…………」

 あたしは悔し涙が溢れそうになるのをこらえて、最後にもう1度女の顔をきつく睨んだ。

 そして、スタジオに戻り、自分の荷物を持つと、一目散に飛び出した。

 悔しい――

 悔しい――

 悔しくて悔しくてたまらない――

 あたしは、パラパラと降ってくる雨の中を駆け抜けた。

 雨は次第に強くなり、あたしの身体をびしょびしょに濡らした。

 それでも脇目も振らずに、走って走って走り抜けた。

 この雨と一緒に、あの女の存在も消えてしまえばいいのに……
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