元カレバンドDX
 小巻の言葉に、あたしは何も言い返せなかった。

 ただ者でない小巻は、どんなときでもあたしのこころを見透かしている。

 おそらく、きっと、まだあたしは、充晴のことが好きなのだろう。

 未練なんてないはずだったのに……

 気づかないようにと、ふたをしていた感情が、一気に溢れ出してしまいそうだった。

 次の講義のテストを終えると、あたしはすぐに家に帰った。

 今は、誰とも話したくないし、ひとりきりになりたい。

 自分の部屋でアロマを焚いて、間接照明の明かりだけを灯す。

 すると、少しはこころの痛みが和らいでゆくような気がした。

 そのままベットに転がり、うとうとしかけた、そのときだった。

 スマホが勢いよく鳴り出したのだ。

 あたしは反射的に起き上がり、スマホを手に取った。

 表示画面を見ると、なんと充晴からだったので、あたしは急いで通話ボタンを押した。

「も、もしもし!?」

「よお」

 充晴のけだるく低い、いつもの声が耳に響く。

 あたしは嬉しくて泣きそうになった。

 もう充晴からの連絡はないと思ったから……
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