元カレバンドDX
「あのさ、バンド嫌ならもう辞めていいよ。みんなには俺が言っとくから」

「え?」

「あと、俺、彼女できたんだ」

 思わず「ひっ」と叫んでしまいそうになる。

「あ、やべー彼女来たから切るね。じゃ」

「え……」

 あっという間に電話は切れて、あたしの中の何かも切れた。

「……ざけんなよ……ふざけんなあーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」


 お腹の底から大きな声を出して、あたしは床を蹴り飛ばした。

 冷蔵庫に向かったあたしは、牛乳パックを取り出し、そのまま口をつけて一気に飲み干した。

 新しい彼女ができれば、あたしなんて用なしなのだ。

 男は邪魔になった女を簡単に見限る生き物なのだ。

「……ンドまで……バンドまで取り上げることないじゃない」

 そして、面倒臭くなった女は、自分の周りから完璧に処理する習性なのだ。

 充晴に、こんな裏切りを受けるなんて、あたしの切ない想いは一瞬にして消え去り、今度は怒りが沸々とわいてきた。

 不意に、LINEの通知音が鳴る。

「誰よ、こんなときに!!」
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