元カレバンドDX
 そんなことは絶対にあってはならない。

 約12時間、あたしはこのひとりの部屋で、パーフェクトなデートスタイルをキープし続けているのだ。

 姿見に映る自分を見て、思わず涙が出そうになった。

 けれど、アイメイクが崩れるので我慢した。

 そして、変なプライドを捨て、自分からスバルに連絡をすることにした。

 そうだ。初めからそうすればよかったのだ。

 ひょっとすると、今頃あたしの家に向かっているのかもしれない。

 あたしはスマホにスバルの番号を表示させ、通話ボタンを押した。

 いつもはLINEの無料電話だけど、なんとなく普通に電話を掛けた。

 気持ちを落ち着かせ、スマホを耳にあてた瞬間、

 我慢していた涙は、滝のごとく溢れ出したのだった。

『お客様がお掛けになった電話番号は、お客様のご都合により、お繋ぎ出来ません。お客様がお掛けになった電話番号は、お客様のご都合により、お繋ぎ出来ません。お客様が……』

「いや~~~~~~~!!!!!!!!!」

 スマホはゴトンという音を立て、床に落下した。

 これは着信拒否をされてしまった呪文である。

 着信拒否をされているなんて、まったくもって気づかなかった。

 ということはもちろんLINEもブロックされているのだろう。

 LINEが既読スルーなのは、スバルが忙しいものだと勝手に決めつけていて、少し気にはなったものの、こんな事態になっているなんて、思いもよらなかった。

 あたしは捨てられたのだ、、、
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