元カレバンドDX
 あたしは化粧もお構いなしに泣きじゃくった。

 泣いても泣いても涙は止まらず、その時間は軽く30分は超えた。

 涙のせいで赤く腫れ上がったまぶたに、マスカラによる黒い涙。

 おまけに、真っ赤なお鼻のトナカイさんになり、あたしの顔は大惨事になっていた。

 不意に、ペンとノートを持ち出したあたしは、なにかに取り憑かれたかのように詩を書き始めた。

 自分でもよくわからないのだけれど、この想いを書き留めておかねばならないという、衝動に駆られたのだ。

 詩なんて、大学の授業で1・2回書いた程度で、ほとんど書いたことがないのだが、不思議なことにスラスラと書け、その筆は止まることを知らなかった。

 題名は「黒いクレヨン」とか「知らないからね」とか「もう何もいらない」とか、どこまでもネガティブなものばかりで、自分で書いていてもひくような内容だった。

 こうしてあたしは、記念すべき10代最後の誕生日を、自分の部屋でひとり、暗い詩を書いて過ごしたのだった――
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