元カレバンドDX
 男友達は、俺に感謝しろよと言わんばかりの顔で、床に散らばった麦チョコを踏まないようにと、つま先立ちで帰っていった。

「……まじ……で……」

 あたしは麦チョコを床から拾い、そのまま口の中へ入れた。

 拾っては口に入れ、口に入れては拾った。

「信じらんない……あのやろう……あたし以外にも女がいたなんて……」

 無数に散らばった麦チョコが、少しづつ片付いてゆく。

「あたし……大好きだったのに……あたし……初めての……相手だったのに……」

 最後の一粒を口に入れたとき、あたしの怒りは頂点に達した。

「スバルの……ばかやろ~~~~!!!!!」

 思い返せば、思い当たる節はいくつもあった。

 デートらしいデートは、「お台場」のときくらいだし、家に遊びに来ても、Hだけして帰っていくことが多かった。

 後半は、ほとんど連絡も取れない状況が続いていた。

 あたし以外に“女”がいても、全然おかしくなかったのだ。
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