元カレバンドDX
 あたしが皮肉めいて言うと、メンチカツをお箸で持ち上げた小巻はにやりと笑う。

「陽愛もバンドがんばりなよ。陽愛ならいけると思うよ」

 ただ者ではない小巻が言うことだ。

「うん!あたしもバンドがんばって、いつか絶対スバルを追い越す!!」

 高い高い食堂の天井に、あたしと小巻の笑い声が響いた。

「ねぇ、それよりさ」

 お茶をすすりながら、小巻が話題を変える。

「なに?」

「わたし、前からすごい気になってるものがあるんだけど」

「だからなに?」

 いちご牛乳を飲みながら、小巻のにやける顔を見つめた。

「陽愛が書いた詩あるじゃん!なんだっけ?黒いクレヨンだっけ!?」

 甘い液体が思わず鼻に入り、あたしはむせた。
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