元カレバンドDX
「はい、これ」

 演奏の爆音にかき消されないように、あたしの耳元にそっと話しかけてくるひとりの男性がいた。

 暗くて顔がよく見えないけれど、その男性はあたしにドリンクを渡して来た。

「それ、オレからのプレゼント。大丈夫、毒とか入ってないよ」

 やはり暗くて顔がよく見えなかったが、優しい顔で笑ったのはわかった。

「え?いいんですか?」

 あたしの問いに、彼はうなずく。

「ちょっと、外の空気吸わない?」

 あたしもちょうど外へ出たいなと思っていたので、彼の誘いを受けることにした。

 ライブハウスの外へ出ると、コンビニの照明が外へ漏れ、夜でも煌煌としていた。
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