元カレバンドDX
「なあに、さっきからオレの顔見てんの?」

「ん?風ちゃんて超かっこいいな~と思って」

「なにそれ?何にも出ないよ?」

 そんな風太の顔はまんざらでもなさそうだ。

 車が動き出してから30分。

 見慣れた風太の家に到着したのは、夜の8時をまわる頃だった。

 風太の実家に来るのは、今日で3回目。

 「静かにね」という彼の言葉を守り、いつも風太の両親に気づかれないように、あたしは2階の部屋に上がるのだった。

「疲れたよ~風ちゃ~ん」

 風太の部屋に入ると、あたしは真っ先にスチールベットに横になった。

 マンガとゲームと音楽の機材で溢れかえっているその部屋は、なかなかあたしを落ち着かせてくれる。

「お疲れだね~陽愛ちゃん」

 風太は、お財布とスマホをテーブルの上に置くと、「もう少ししたら、ごはん食べに行こっか?」と、テレビをつけた。

 そんな風太を横目で見ながら、あたしは布団の中にもぐる。

 そして、今日のバイト中の会話を思い出していた。
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