元カレバンドDX
 バイトの先輩は「自分から誘っちゃえば?」なんて言っていたけれど、さすがにそれには抵抗がある。

 かといって、このままこの問題に向き合わないでいたら、風太は、ずっとあたしに手を出さないような気がした。

 無防備を演出するあたしに、風太は何も気づかないし、相変わらずいつもと変わらない調子なのだ。

「ねぇ、風ちゃん。一緒に寝ようよ~こっち来て」

「ん~?ちょっと待って」

 ジーンズを脱いでスウェットに着替えた風太は、布団をめくって、あたしの横に来た。

 風太とあたしは、うつぶせの状態で両肘を立て、頭だけ出してテレビを見る。

 くだらないお笑い番組に、風太はケラケラと笑っているが、あたしの心中はそれどころではなかった。

(どうしようどうしよう……なんて切り出そうかな……自分から誘うのはさすがにちょっとあれだし……う~ん)

「……ちゃん?陽愛ちゃん?どうしたの?」

「ん?」と、風太の方を見たら、そのままキスをされた。

(もしかして、今日こそは……!?)
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