元カレバンドDX
 うわずった声を出した風太は、あきらかに焦っていた。

「……あのね、陽愛ちゃん」

 あたしは生唾を飲み込む。

「オレ、別にあんまり好きじゃないんだよね」

「へ!?」

「いや、あの、陽愛ちゃんのことは大好きだよ。でも、そのHに対して、そんなに興味がないっていうか……」

 あたしの脳裏に、“淡白”とか〝草食”というフレーズが浮かぶ。

「別にあってもなくてもどっちでもいいんだ。心で繋がってれば、それでいいかなって」

 そう言って風太は下を向いた。

「でも前にも彼女いたんだよね?経験はあるんでしょ?昔の彼女は、それでなんにも言わなかったの?」

「う~ん……というより、前の彼女がそういうのが嫌いな子だったから、オレもHとかどうでもよくなっちゃったのかも」

 風太の横顔を見て、こんな男性が世の中にいるものなのだと、あたしは妙に感心してしまった。
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