元カレバンドDX
 5限の講義を終えてから、あたしと小巻は池袋へ向かった。

 池袋方面の電車に揺られながら、あたしはあることを思いつく。

「あ、ねぇ、小巻。差し入れって必要かな?なにか買ってった方が喜ぶよね?」

「ん?陽愛が買っていきたいんだったら買っていけば?」

「そんな人ごとみたいに~!だって、風ちゃんのバンドメンバーに挨拶したいし、差し入れとか持ってって、出来る彼女って思われたいじゃん!」

「だから、買いたいなら買っていけばって」

「じゃあなに買っていけばいいの~!?」

「知らんよ」

「小巻のばか~!えーんえーん!」

 幼稚園児のような下手な泣きまねは、なぜか電車内の視線を一気に集めてしまい、恥ずかしくなったあたしはすぐにやめた。

 池袋に着いたあたしと小巻は、とりあえずコンビニに入る。

 小巻の「じゃあ、ジュースとお菓子でいいんじゃないの?」という提案を実行するためだ。

「えっと~、風ちゃんでしょ~、ベースの男の子と、ギターとボーカルの女の子だから~4本か」

 飲み物の陳列ケースから4本のジュースをかごに入れた。
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