水泳のお時間<番外編>
「つかまって。はぐれないように」

「は、……う、うんっ…!」


そう言って、もう片方の手でわたしの手を優しく握ってくれた瀬戸くんに、

とうとうわたしの胸はドキドキ言って止まらなくなった。


…考えもしなかった

瀬戸くんとこんな風にイヴを過ごせる日がくるなんてこと。


夢のまた夢だと思ってた。


だから今この幸せな時間も、いつか突然醒めてしまうんじゃないかって

全部なかった事になる日が、来てしまうんじゃないかって。


ふとそんな気持ちが頭をよぎるのはきっと

わたしの方が瀬戸くんを好きだってこと、知ってるから


瀬戸くんを想うわたしの気持ちの方がずっとずっと大きいってこと

気づいているから。


…片想いしてた期間が長すぎたからかもしれない。


永遠にわたしの片想いなんだと、そう思い込んで止まなかったから。


夏が過ぎて、もう半年が経つというのに


こうして今瀬戸くんといられる時間が、とてもあったかく、くすぐったくて幸せ。


でも本当は心の底から信じきることが出来ないような

わたしの心はまだちゃんと地面に足をつけて立っていないような

そんな気持ちになったりもする。
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