white coat
だけど今を逃したら会えない気がして。
コンビニを出た杏乃の肩を。掴んだ。
ビクッと体を震わせた杏乃が振り返った
「…あき、と…?」
俺はびっくりして声も出なかった
傷だらけの顔
腫れた目
「杏乃…どうしてそんな…」
「やだ。見ないでよ… 帰って」
杏乃もびっくりしたのは一緒みたいで、買い物袋を落とした
「むり。帰れない」
「じゃああたしがもう帰るから」
「だめ。帰さない」
だめだ。こんな杏乃を見たら余計に離すなんてできない。
「……お願いだから…離して…」
弱々しく震えた声でそう言った杏乃
「杏乃…?」
「…なんで…なんであたしの前に来るのッ…会いたくなかったッ」
「俺は会いたかった」
「…裏切ったくせにッ」
「違う。あれは違うんだ」
あの日、杏乃に見られたキス
「あれは、無理やり強引に押し当てられただけなんだ」
ほんとに。嘘なんかじゃない。