みんなみたいに上手に生きられない君へ
「月子?......よかった、出てくれた」



もしもし、と蚊のなくような声で言うと、聞こえてきたのは、ほっとしたような和也くんの声。

いつもみたいに優しくて、ちょっと低い和也くんの声。

その声を聞いて、なんだか私の方がすごくほっとしてしまった。



「......和也くん。
今日ごめんね、いきなり帰ったりして」

「今日みたいなこと、よくあるの?」

「よく、......はないけど、たまに。
ちょっとしたことで、人と一緒にいるのが無理になっちゃう」

「そっ、か......。
それって、俺と二人きりでいるのも無理なの?」

「あ、ううん、たぶんそれなら大丈夫だと思う。
和也くんや珠希ちゃんたちなら、たぶん、平気。
知らない人とか、あんまり仲良くない人だったら無理だけど......」



ちゃんとしゃべれるか電話に出る前は不安だったけど、和也くんに誘導されるように、気づくと普通に受け答えしていた自分にびっくり。

和也くんだからかな。
本当に和也くんって、すごい人だ。
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