みんなみたいに上手に生きられない君へ
しばらくの間があったうちに、和也くんは言葉を選ぶようにゆっくりと話し出した。



「今日、いきなり帰られたから、月子に嫌われたかと思って、かなりショックだった。でも、そうじゃなくて安心した。

今日、楽しかったよ。また遊びたい」



和也くんの優しい声で、胸がいっぱいになる。

嬉しいはずなのに、なんだか胸がぎゅっと詰まったように苦しい。



「和也くん......。
でも、私......。

私のこと変だと思ったでしょ?
私、おかしいよね?」
 
「う~、ん......。
俺も逃げ出したくなるときあるよ。
サッカーの試合の前とか、......テストの前とか」

「でも、和也くんは逃げたりしないよね。
みんなはちゃんと逃げたくなっても我慢できるのに、私はできない。みんなと同じことができないの」



私なんかよりずっとプレッシャーのかかる場面になっても、普通の人は自分の意志でその場にとどまることができる。

プレッシャーと戦って、ちゃんと勝つことができるのに、私は、できない。

したいのに、できないんだよ。

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