山賊上がりの近衛兵

父と息子 頭領として、跡目として

 父としてではない。山賊の頭領として、今は目の前の少年を徹底的に、精神的に痛めつけているはずだった。
 脅しを交え、不幸な未来をイメージさせる。だが、それでもカルバドスはそんな頭領の眼差しに一歩も引こうとはしない。寧ろ父親としてではない。どこか超えるべき壁を見つけたような、そんな目で睨みつけていた。

「だろうよ。で、父さんはそんな日が来ることが分かっていた上で、俺やライナに修行をつけてくれたんだろ?」

「んだとぉ?」

「結局面子って話だ。皆の前でふがいない俺を見せたくないから、今日までの修行はずっと死ぬほどキツイ物だったよ。それとも、父さんが施してくれた修行は、そんな捕まるような捕虜に負けるほど情けない物なのかい?」

 頭領は息子が恐れるように、怖がるように凶悪な笑顔で、言葉で追い込んでいたつもりだった。だが、存外そんな圧力を受けたうえで、カルバドスは全身から冷や汗をかきながらも不敵に笑ってみせた。

 そんな彼を目にした頭領、逆に少し馬鹿にされているようで拳骨を入れたくなるほど腹立たしくも感じたが、一つ深呼吸をすると落ち着いたように口を開いた。

「当然だ。3つの時から鍛えてんだ。テメエはガキとはいえ10年戦士。構えろ。生き残る確率を当日ギリギリまで高めてやる」

 そうして、頭領はとうとう戦闘姿勢をとった。その全身から溢れ出す、まるで赤や黄で色付けされているのではないかとも思える闘気。その圧を全身に感じながら歯を食いしばり構えたカルバドスは、目の前の父親に集中した。
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