山賊上がりの近衛兵
「それにもともと本能に従うタイプなのですから勘に従ったものを後で理論的に蒸し返すなど貴女らしくない」

「こ、子ども扱いしないで!」

涼しげなヴィクセンの言葉に、少しずつ落ち着きを失っていくルーテシア

「いやぁ、恋は盲目。体現していらっしゃいますね。ルーテシア様」

「ヴィクセン! もう!」

 ヴィクセンは取り乱したルーテシアの姿に少し声をあげて笑った。普段は冷静な近衛騎士長。何かは分からないがルーテシアの一挙手一投足がツボにハマってしまったらしい。

「これは失礼を。いえね、久しぶりにあなたのその表情を見ることができたのが嬉しかったのですよ。その表情だってこれからは将軍閣下のみの物になってしまうのですから」

 そこまで言い切った彼は一息落ち着いて、そして口を開いた。

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