山賊上がりの近衛兵
 ようやく弱弱しい笑顔を取り戻したルーテシアに小さくうなずくヴィクセン

「まぁ、将軍もあれで人間ですから。怖い事の一つだってあります。ルーテシア様を政治の道具、ですか? ない事もないでしょうが……それには大きな決断を余儀なくされるでしょうね。 “叩っ斬る!”。 誓っているようですから」

「あ、それって」

 優しく頭を撫でつけていたヴィクセン、普段は冷静沈着な彼が急に両手を振り上げ、演技じみた気合いと共に力強く振り下ろす。

“愚か者が”

 そんな彼が両手を振り下ろした瞬間に苦々しげにぼそりと呟いた言葉をルーテシアは聞き逃さなかった。

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