山賊上がりの近衛兵

ジイジの嘆願

「ルーテシア様?」

 この里で、これまでなかったジイジの立ち振舞いにどうして良いか判らないかのように立ちつくす彼女。
 分からないのは彼の行動だけではない。眉をひそめながらその指で弄ぶルーテシアは、自らの髪の色が目を覚ませばいつの間にか変えられてしまっていたのだった。

 その髪色は……

「ルーテシア様。今しばらくの辛抱ですじゃ。一週間、とは申しませんが、来月には次の場所はきっと見つかりましょうぞ。そしてその時こそ盛大に宴を開きましょう。里の者大勢を呼んで、音楽に舞踏にご馳走に。このジジイめも腕によりを掛けて好きな料理を作りましょう? それで宜しいか?」

 と、そんな時、彼女の目の前にベルトラインが跪いた。まだ荷づくりが終わっていない、極めて急いているのだろう。彼が見せる笑顔はどことなく心ここに非ずといった物だった。

「う、うん」

「良かった。それではお手を動かして頂かなくては!」

 だからルーテシアはおずおずと頷いた。あまり見た事のないベルトラインの様相を邪魔するのも少し怖かったから。その様子に満足そうにハニかんだベルトラインは、一つ気合を入れ、まだ纏められていない家財へと歩を進めていった。
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