山賊上がりの近衛兵

若頭としての兄

「人の心配をしてる場合じゃねぇ。お前の元服は来年だってのに。どうにもアレは待ってくれないらしい。悪いが俺だってお前を守ってやる余裕はないかもしれねぇ」

「追手との戦闘、もしくは移転先を縄張りとしてる別の里との交戦……」

「そしてそれはきっと酷い物になる。里を構えるにゃどんな地形でも良いってわけじゃねぇ。そして、里を失う事への不安、恐怖、今の俺達にはわかるだろう。そいつらがどれだけ必死に防衛に喰らいついてくるか」

 淡々と述べるカルバドスの目は、まさしくこれから狩りに赴く獣にも似たようなものだった。

「他の集落への服従による敷内の間借りは……」

「ま、無理だろう。オヤジが服従? 無いね。それに、俺達は今や御同業には嫌われ者に違いねぇさ。この山に面倒事を連れてきちまうんだから」

 提案や意見する弟の言葉をことごとく否定する兄、勉強とは無縁なカルバドスはこういうところでは鋭い指摘を見せる男だった。
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