山賊上がりの近衛兵

瓦解する当たり前

 当たり前のように知っていたカルバドスと言う青年は、実はもう既にいなかったと言う事に。そして今目の前で里の者達と共に闘う為に、ルーテシア達非戦闘員を守る為に迸る戦気を溢れさせるその雰囲気こそ、この集落の若頭、本来のカルバドスの姿だったのだ。

 それが、元服を迎えたかつての幼馴染が、その間に何があったのだろう2年間をかけて醸し出す”大人”としての風格。

 きっとカルバドスの事だ、ルーテシアには隠そうと隠そうと必死だったのかもしれない。少し考えれば元服を境にそれまでの彼とは違う細かい点だって見なかったわけではない。

 気付かなかったのか、気付こうとしなかったのか、気付きたくはなかったのか。
 彼が未だ”子供”だと決めつけ叱咤した己、命を救ってくれた”大人”としての彼を拒絶した自身。

 「全部……壊れちゃった」

 なんと愚かだったのだろうか。 

 ルーテシアは呟いた。呟くと言う言葉もそぐわない。零したと言う方が正確か、それほどに絶望、今歩き続ける為のその力でさえ抜けて行きそうだった。
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