【完】俺のこと、好きでしょ?


藤くんはわたしと向かい合うように座って、優しくわたしの手を握る。


「……俺は、奈帆と離れてまで県外の大学に行こうとは思わない」

「待って、藤くん。わたしは、わたしのことを理由に藤くんが自分の視野を狭めるなんて嫌だよ」


そんなのただのお荷物じゃん。


藤くんが1年生の時から勉強を頑張ってたのは知ってる。

学年の上位にずっといることがどれだけ大変なことか。でも、藤くんはずっと上位だ。


目標がないのに頑張れるわけないって。

だから、藤くんにはずっと目指しているものがあって、それをわたしは知らなくて。


知らされることがないまま藤くんが大学を決めちゃったらわたしは自分のことを嫌いになると思う。


「まだ2年生の秋で確かに決まってるものじゃないのだとしても藤くんが行きたいと思ってる大学に行ってほしい」

「なんか、奈帆に背中押されるなんて思わなかった……」

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